0→1のプロダクト開発をやっていて、「顧客に刺さるはずだと思ったことが外れる」ことは度々ある。 仮説や見立てが甘くて、顧客の「めっちゃ欲しいもの」ではなく、「あったら良さそう」をそのまま真に受けてしまうケースだ。このギャップは思っているよりずっと深い。
「売れる」と「使われ続ける」は、必ずしも一致しない
営業、事業サイド、代表、CTOたちとプロダクトを作っていると、それぞれが鋭い視点を持っている。「こうすれば売れるのでは」「この機能があれば決裁が通るのでは」・・・そういう議論が活発に起こること自体は、本当に有難いことだ。
ただ、自分がPdMとして最近意識していることがある。
「売れるためにすること」のすべてが、「ユーザーのためになること」とは限らない。
この二つが一致する場面もある。でも一致しない場面も、思っているよりずっと多い。そういう場面で、敢えてブレーキを踏む役割が必要だ。それがPdMだと思っている。
「決裁者」と「ユーザー」が別な人
今開発しているのはBtoBのプロダクトで、登場人物として大きく2人いる
- 決裁者:予算を持ち、契約を判断するマネージャーやリーダー
- エンドユーザー:日々、実際にそのプロダクトを使う現場の人
この二者は別人であることがほとんどだ。そして0→1でプロダクトを作り、「より売っていこう」とすればするほど、プロダクトは「決裁者が頷くもの」へと引っ張られていく力学が自然と生まれる。そして営業ドリブンで動いた結果、エンドユーザーにとって使いにくいプロダクトが出来上がる。
現場への影響を想像する
少し雑で極端な例えだが、こういうイメージ
「チームの誰がどこでつまずいているかを追いたいはずだ。成果が伸び悩んでいるメンバーが人目でわかる状態にすれば良いのではないか。」
ビジネス観点でいえば、一定の論理がある。マネージャーはチームのボトルネックを把握したいし、そのニーズを解決するプロダクトは恐らく「決裁が通りやすい」。
ただ、実際にそのプロダクトを使う現場のメンバーはどう感じるのだろうか?
自分のパフォーマンスが社内で可視化・ランキングされる環境で、人は安心してツールを使い続けるだろうか。むしろ、ツール自体を「監視装置」として敬遠するようにならないか。ツールへの信頼が失われると、良い機能であったとしても使われなくなるだろう。
最後の砦というマインドセット
社内の様々な立場の人が各自の視点で「ああすれば良い、こうすれば良い」と言ってくれることは、とっても有難いことだ。ただそこで、PdMとして意識したいことは
- 「これは誰のためのプロダクトなんだっけ?」
- 「使い続けてくれる人は誰なんだっけ?」
かなと思っている。事業とプロダクトの間に立ってバランスを保ち、プロダクトのユーザー体験を守ることもPdMの大事な役割だと考えている。
ユーザー体験を守ることは、長期的には事業を守ることでもある
誤解されたくないのは、「ユーザー体験を守る」と「事業を伸ばす」が対立するものでもなく、トレードオフでもないということだ。そして、とにもかくにも「事業・売上を伸ばす」ことが重要な場面も当然ある。
短期的には「決裁者が喜ぶ機能」を優先すると受注率が上がるかもしれない。でも、エンドユーザーが使わないプロダクトは、契約更新時に必ず離脱される。「契約したけど現場が使ってくれない」と「費用対効果が見込めない」という事態になるからだ。だから、ユーザー体験を守ることは、長期的なLTVを守ることでもある。
砦としての在り方
事業サイドへ何でもかんでも「ちょっと待った」と噛みついているという印象になったかもしれないが、別に反対することが目的ではない。ただ、問い直してより良い意思決定にすることが目的である。
恐らくPdMである自分自身もGoを出したらそのまま開発チームが開発をしてくれてリリースすることになる。 だからこそ「この判断は事業のためになっているか、プロダクトのためになっているか、そして顧客のためになっているか」を、Goを出す前に熟考するのだ。事業やプロダクトの様々な事情を考慮した上で、それでも「これで良いのか」と一度立ち止まれるかどうかがPdMとしての誠実さであり、重要な役割の一つだと思っている。