より良いモノを作りたいだけ

より良いモノを作りたいだけ

”確からしさ”集めて、より良い意思決定を

新規プロダクトの立ち上げでの気付き。

現場にヒアリングしに行ったら、自分が見えていなかったものがたくさん見えて、意思決定の質がかなり変わった。その体験を少し。

前提:自分の立場

社内の新規プロダクト立ち上げを担当している。「何を作るか」の意思決定そのものを任されている。

何を解決するために何を作るか、全部決めていかなきゃいけない。

まず仮説を立てた

課題を定義して、解決策を考えて、それが数字に効くはずだという仮説を立てた。定量データも見たし、市場の情報も調べた。ロジックとしてはまぁそれっぽい。技術的にも実現できそう。

ただ、このプロダクトを使うであろう現場の人たちが本当にこれを必要としているのかは、自分の中で確信が持てなかった。頭の中だけで組み立てたロジックかもしれない、という感覚があった。

モックを持って、現場に聞きに行った

高速でモックを作って、ユーザーになり得る4名に見せに行った。画面を一緒に触りながら率直な感想をもらう。

返ってきたのは、想定していなかった声だった。

「いきなりアプローチするのはキモいですよ。関係性がすべてなんで。」

自分のロジックでは「効率よくアプローチできる仕組み」が価値だと思っていた。でも現場の感覚では、効率化どころか信頼関係を壊すリスクだった。「キモい」という一言の中に、数字では見えない現場の感情が詰まっていた。

「KPIのためにこの機能は喉から手が出るほど欲しい。でも、実際に使える場面は25%もない。」

欲しいけど使えない。事業の論理(KPIに効く)とユーザーの現実(でも使える場面がない)が噛み合っていなかった。

「そもそもこの機能以前に、もっと手前に本当の課題がありますよ。」

自分が解こうとしていた課題より、もっと根本的なところにボトルネックがあった。

解像度がめちゃくちゃ上がった

ヒアリングで一番大きかったのは、仮説が合っているかどうかの答え合わせではなく、課題に対する解像度が一気に上がったこと。

  • 自分が想定していなかった感情が現場にはあった
  • 業務の細かいディテールが、ロジック上の前提を覆していた
  • 現場は自分の想定を超える方法で、すでに課題を回避していた

特に、「この課題を解決するプロダクトを作ろう」と思っていたものを、現場はプロダクトなしで独自の運用で乗り越えていた、というのは面白い発見だった。

ロジック上は正しくても、定性的・感情的に受け入れられるかどうかは全く別の話だということも分かった。今のプロダクト開発でも、ユーザーの立場で感情的に自然か、納得感があるかという観点で考えるようになっている。

仮説を納得して捨てられた

ヒアリングの結果、当初の仮説はやめて次の仮説検証に進んだ。

これがスムーズにできたのは、「なぜダメか」の解像度が高かったからだと思う。現場の声という裏付けがあるので、納得感を持って捨てられたし、次に何を検証すべきかも見えていた。

もし3ヶ月作り込んでから「なんか違う」と気づいていたら、手がかりもなく途方に暮れていたと思う。早い段階で確かめに行けたのは正解だった。

意思決定の「強度」が変わった

ヒアリング前は、頭の中でロジックを組んで定例で説明していた。筋は通っているけど、現場を知らない自分が会議室で考えたロジックに、周囲が全幅の信頼を置けるかというと、まあ難しい。

ヒアリング後は、「こういう場面で、現場はこういう感情を持っていて、だからこうすべき」と語れるようになった。ロジックの骨格は同じでも、そこに現場のリアルが乗っているかどうかで、相手の受け止め方がまるで違った。

定例で「当初の仮説は現場では受け入れられない」と伝えた上で別の方向性を提案した時、ロジックだけの提案とは説得力が全然違ったし、自分自身も「なぜこう判断したか」を自信を持って語れた。

自分は知らないことが多い

ヒアリングで一番の気づきは、結局これだった。

自分は知らないことが多い。当たり前のことだけど、プロダクトの意思決定を握っていると、自分のロジックで全部カバーできると思い込みそうになる。

でも実際は、そのドメインで毎日深く仕事をしている人たちだからこそ持っている情報がある。経営層ですら、現場のディテールは知らないことがある。エンジニアの想定を超える感情を持っていたり、想像を超える方法で課題を回避していたりする。

だからこそ確かめに行って得た情報は、自分個人のためだけじゃなく、チーム全体の意思決定を支える武器になった。実際にヒアリングをきっかけに現場との関係性も変わって、別の施策の相談をもらえるようにもなった。

確からしさの集め方

ヒアリングの「正解のやり方」はまだ分かっていない。4名に聞いたけど、最適な人数はプロダクトの性質やフェーズによって変わるだろう。聞いた情報を鵜呑みにするリスクもある。

ただ、誰に・何人に聞くかは超重要だということは確信を持って言える。確からしさは量と質で担保するしかない。聞いた内容は「裏付け」として使うのであって、「答え」として使うのではない。

白紙の地図にピンを刺すな

会議室で組み上げたロジックだけでプロダクトの行き先を決めるのは、白紙の地図にピンを刺すようなものだと思う。

現場の声を聞いて、定量データを重ねて、確からしいものを一つずつ地図に描き込んでいく。その上で「ここに行く」と決める。定量を定性で、定性を定量で語れるように。

確からしさを1つずつ集めながらプロダクトを創っていく。自分がこの立ち上げで学んだ、大きなことだった。